神格
ディシア(Dicia)は、賽を振る者 に目を留める女神。ラクシアに並立する独自神格のひとつであるが、その権能はごく狭く、名を連ねた古文書は少ない。
大神でも、蛮族神でもない。至高神の系譜にも連ならない、独立した小神。ラクシアの信仰序列のどこにも属さず、公的な教団も、体系化された典礼も、彼女の名では立たない。
司るもの
ディシアが見届けるのは、定められた運命に賽を投じる、その行為そのもの である。
血によって敷かれた人生、生まれついた境遇、社会の押しつける役割 ――そこに留まる限り、賽は振られない。振られない賽には、女神の目も留まらない。しかし、誰かが定めに抗おうとして賽を振るとき、その一瞬の揺らぎに女神は気づく。
出目がどう転ぶかを彼女が左右するわけではない。結果の成否に対する関心も、ない。 振ったか、振らなかったか ――それだけが女神の関心事である。
大神たちが結果そのものを握り、運命の筋を描くのに対して、ディシアは「運命から踏み出す一歩」の側に立つ。権能として地味で、狭く、大多数の民には見えない。それでも彼女は、賽が投じられる限り、その都度目を向ける。
並立する独自神として
ディシアは大神序列に属さず、他神の政治抗争にも巻き込まれない。代わりに、広く信仰されることもない。
名の知られない小神としての立場を、自ら選んだのか、それとも与えられた席に座っているだけなのかは、本人以外には分からない。いずれにせよ、この女神は 「運命を自ら振ろうとする者」の側に立つ神 として、ラクシアの辺縁に存在している。
信者
ディシアの信者はほとんどいない。専属の神官階級は事実上存在しない。
ごく稀に、賭場で勝負に出る博徒、覚悟を要する場面で彼女の名を呼ぶ冒険者、占いや判じ物を生業とする者が、女神の名を口にする程度である。
組織化された祀り方はなく、公式に認知された祭儀もない。信仰の形は個々人の内心のうちに閉じており、外から見えるものは少ない。
シンボル
ディシアと結びつけて語られるのは二つの物。
- ダイス(賽):特に正二十面体。定められた結末を押し返す道具の象徴。
- 古びた規則の書:選択の余地と、そこに線を引く基準の両方を表す。
いずれも彼女自身が持つものというより、賽を振る者の手の中にある 道具として語られる。女神はその手元を見ているだけで、道具そのものを授けることはしない。
ギルドとの関係
「ダイスの女神に愛されし者達」 は、ディシアの名を冠する数少ない集団のひとつである。公的な教団ではなく、神官団でもなく、あくまで冒険者ギルドとして存在している。
ギルドが共有する理念(ギルドの成り立ち を参照)――「運命に賽を投じること」「出自ではなく意志を問うこと」は、ディシアが見届ける振る舞いと重なる。ギルドメンバーが賽を振る限り、女神はその手元に目を留めている。