概要
ブルライト西部の荒野に眠る古代魔法文明の廃坑が、奈落の魔域に呑まれた。音信を絶った先発調査隊6名——生きているのか、死んでいるのか。 救う者を抱えるほど戦いは苛烈になり、そのぶん報いも重くなる。深く潜るほど強まる魔物と、傲慢な下級貴族の息子。 満身創痍の生還劇の記録である。
粗筋
王都ハーヴェスのギルドに舞い込んだのは、身元を伏せた依頼主からの捜索依頼だった。ブルライト西部の荒野にある古い魔晶石採掘場——実は古代魔法文明後期の奈落研究施設を併設した複合遺構——が奈落の魔域に呑まれ、調査に入った先発調査隊6名が音信を絶って6日。〈悪魔の血晶盤〉の測定値はLv4前後。リンリン、ナヤツ、エルナ、リティア、リュティ(An196-4C)の五人が現地へ向かった。
1層の坑道はまだ現実の匂いを残していた。野営の跡、争いの痕跡、そして——第1坑道に横たわる護衛の遺体。調査隊は蛮族の中集団に襲われ、殿を務めた護衛一人が戦死、残りは散り散りに深部へ追い立てられたのだ。ボルグどもの警備を蹴散らし立坑を降りると、2層は研究施設の区画だった。物陰に隠れ潜んでいた副官、魔法陣に拘束された偵察役、壁際に追い詰められていた護衛——生存者を一人、また一人と保護するたび、魔物たちの狙いは守るべき者へと向かい、戦いは目に見えて苛烈になっていく。
3層は、もはや異界だった。長く魔域に棲んで変異した魔物どもの領域。拘束区画で重傷のリーダーと、蛮族に捕らわれていた下級貴族の息子を救出する——もっとも当の息子は、命を救われてなお命令口調を崩さない筋金入りの傲慢だったが。そして最深部の核殿。古代の研究装置と癒着した〈奈落の核〉を守る番人、剣のかけらを撒き散らすアビス・コアイミテーターとの死闘。守るべき者たちを背に庇いながらの総力戦を制し、五人は崩れゆく魔域に開いた脱出口から、生存者たちとともに地上へ帰り着いた。
貴族の息子はボロボロになりながらも、ギリギリで生きて帰った。戦死した護衛の遺品も、遺族のもとへ届けられた。荒野の廃坑は静けさを取り戻し、依頼主からの報酬は救い出した命の数だけ重かった。
名場面
第1坑道の骸
坑口から続く痕跡を辿った先に待っていたのは、生存者ではなく、殿を務めて果てた護衛の遺体だった。仲間を逃がすための足止め。武器と血痕が物語る奮戦の跡を前に、一行は残る5名の生存を信じて深部へ潜る覚悟を固めた。救出行はここから始まった。
救う者を抱える重さ
副官、偵察役、護衛——2層で生存者を保護するたび、魔物どもの牙は守るべき者たちへ向かった。前衛が庇い、後衛が援護し、抱えるものが増えるほど戦列は軋む。それでも「一部を諦める」という選択肢を、五人は最後まで取らなかった。
傲慢のままの生還
3層の拘束区画から救い出された下級貴族の息子は、開口一番から命令口調だった。九死に一生を得てなお成果を語り、指図をやめない。それでも——ボロボロになりながらギリギリで生きて帰ったその姿こそ、この救出行の成果そのものだった。
核殿の総力戦
幾重にも撒かれた〈剣のかけら〉、取り巻きの変異魔物、そして〈奈落の核〉の番人アビス・コアイミテーター。守るべき生存者を背に、最後の閃光をかいくぐっての死闘の末、番人は砕けた。崩壊する魔域に開いたつかの間の脱出口を、五人と生存者たちは駆け抜けた。




