概要
半世紀以上人の寄り付かなかったライフォス廃神殿。その地下に、200年前「異端」として除名された一派の祭祀場と墓所が眠る。 家畜の異常死、汚れた井戸、夜に響く誰のものとも知れぬ祈り。神殿筋は「関わるな」と制止し、領主は独自にギルドへ依頼を出した。 異端とされた者たちは、本当に異端だったのか——五人が地下で見たのは、命を懸けて何かを封じ続けた者たちの真実だった。
粗筋
地方都市の外縁、丘の中腹に建つライフォス廃神殿の周辺で怪異が頻発していた。神殿筋からの非公式の制止を押し切り、領主は独自にギルドへ調査と封印再強化を依頼。アンセル、セラジール、クリストフ、ミシェル、ユーヤの五人が受注した。廃神殿の玄関前には半月と経っていない複数人の靴跡。誰かが、今も出入りしている。
地下上層は探索の場だった。塗り直されたばかりの漆喰、持ち出された聖印、貼り替えられた封印——200年前に「異端の遺産に触れさせない」ための上位封印を施したライフォス神殿が、その封印の劣化を悟り、今も密かに応急補修を続けている痕跡だった。彷徨うアンデッドを退けながら中層へ降りると、そこには異端の祭祀場が広がっていた。祭壇に向かって座したまま力尽きた遺骸の列。血の染みた儀式長の祭服。分散して隠された教義写本。読み解かれていく真実は、告発とは程遠いものだった——彼らは教義の純粋性を追い求めた果てに異界の存在を招いてしまい、それを自らの命を賭した祭儀で封じ、全員でここに果てたのだ。
封印前室では、異端者の遺存霊が五人を待っていた。「いずれ綻ぶことを知っておりました」——200年間封印とともにあり続けた魂との問答の末、五人は選んだ。討ち滅ぼすのではなく、鎮魂の道を。最深部の封印中枢で、劣化した封印から滲み出そうとする「祖が招きしもの」と対峙した五人は、祭儀の手順に則って向き合い、最後は正面からこれを打ち倒して——浄化した。異界の存在は消え去り、200年の祭祀は、その役目を終えた。
かくして怪異は止んだ。異端と呼ばれた者たちが命を懸けて守り続けたものの正体と、それを覆い隠し続けた神殿の200年が、地の底から掘り起こされた一夜だった。
名場面
半月前の靴跡
50年間誰も寄り付かないはずの廃神殿の玄関前に、真新しい靴跡が3〜4人分。中に入れば、塗り直された漆喰と貼り替えられた封印。「異端の遺産だから関わるな」と制止してきた神殿筋こそが、誰よりも足繁くここへ通っていた——最初の違和感が、200年の隠蔽の糸口だった。
祭壇に座したままの遺骸
中層の祭祀場で見つけたのは、全員が祭壇に向かって座したまま力尽きた異端者たちの遺骸だった。自分たちが去った後も封印が保つように、命を捧げて最後の祭儀を執り行った者たち。「異端」の名の下に葬られたのは、世界を守って死んだ者たちだった。
「いずれ綻ぶことを知っておりました」
封印前室に佇む異端者の遺存霊は、200年の間、自らの封印が完全でないことを知りながら待ち続けていた。討伐か、鎮魂か。問答の末に五人が選んだのは、彼らの祭儀を継ぎ、魂を鎮める道——剣ではなく、まず敬意だった。
打倒、そして浄化
だが「祖が招きしもの」は、鎮めの手だけで消えるほど弱ってはいなかった。最後は正面からの死闘。異界の存在を打ち倒し、浄化の光の中に送った瞬間、200年間この地下に張り詰めていた何かが、ようやくほどけた。異端者たちの長い務めは、ここに終わった。




